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"それ"は、唐突に起こった。
"それ"が何なのかは、俺には分からない。
ただ、それまで明るい太陽の光に満ちていたその街の映像は、唐突に暗くなり、揺れ始めた。
街中を行き交う人々は、何が起きたのかよく分からないといった表情で当たりをキョロキョロする。
一人の男が、どこか高く、遠い所を見つめ、何かを見つけたのかその方向を指差し、何かを叫び出す。
何を叫んだのかは分からない。
その声と同時に轟音が鳴り響いたからだ。
傍観者の俺には、その轟音がどこから鳴り響いたモノなのか全くわからなかったが、その人々が男の指差した方向を見つめ、慌てて逆方向に逃げ出した為、それは容易に想像出来た。
それからほんの数秒の間を取り、映像は眩いばかりの白い光に包まれる。
光が消え、映像はまたその街を映し出す。
いや、もうその光景を街とは呼べないだろう。
…レンガで造られた建物は跡形もなく吹き飛び、人々は逃げる間もなく残骸となり果てその場に転がっている。
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