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一方、正はと言うと、詩織の恋愛話の突っ込みにヒヤヒヤしていた。
過去の恋愛については触れられたくはない。
自分でも思い出さないように封をしているのだから。
油断すると沈んでしまい浮き上がってこられない気がしていた。
それ程に正にとっては辛い過去であった。
詩織は明るいし楽しい。なにより話のテンポも合っている。彼女にするならこんな子がいいなぁ。
詩織だってこんなに俺の事を聞いてくるなんて俺に気があるのかもなぁ。
でも…受け入れられる自信は…ない。
いっそこのまま離れた方がいいのかもなぁ。
と、正は矛盾にも似た感情を持て余していた。
たった一歩。
相手に歩み寄ればいい。
だがその一歩の先にあった辛さ。
一歩の重みを知っている正は、どうしても踏み出せなかった。
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