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PM07:46
台湾タイペイ
ジェット機から降り立つと同時にねっとりと肌に纏わりつくような蒸し暑い熱風が吹き付ける。
(あの女――)
定秋の目線はサングラスをかけたきれいに髪を束ねた若い女を見ていた。
「誰か知りあいでもいましたか?」
耕助が呑気に団扇を仰ぎながら聞いた。
「いや、なんでもない」
「そうッスか。
いやぁそれにしても、暑いッスね。
取り敢えず台湾支部にでも行ってみやすか?」
「手掛かりの一つも掴めない支部に行ったところで仕方がない。
まずはホテルを決めて、そこを根城に捜索を進める」
定秋は空港の出口に向けて歩きながら言った。
「いや、お姉さん。
そのサングラスとてもお似合いッス。
私も綺麗なあなたのアクセサリーに」
耕助は知らないうちに定秋が見ていた中国人らしき美人をナンパしていた。
(チッ、子守よりも厄介な物がくっついてきたな)
定秋は耕助を無視して足早に空港を後にした。
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