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「――ミシュア、あそこに誰かいるぞ」
騎士が顔を上げる。
それは数頭の馬の群れだった。先頭の黒馬には、男が一人乗っているのが見える。
男の乗る馬に沿って何頭かが足取りを合わせてゆっくりと駆けている。
草原の緑の鮮やかさに溶けていくように、それはしなやかで、やわらかな光景だった。
「あの者は馬律の民(エクリスタ)です」
ミシュアが見つめながら言った。
「エクリスタ……?」
「身分を持たない流浪の民族です。馬を扱うことに長け、馬と共に暮らす人々」
フレデリカが見つめていると、不意に男が、馬を駆けさせたままちらりとこちらを向いた気がした。
すっ、とミシュアが立ち上がり、フレデリカの前に立つ。
視界が彼でふさがり、男と馬達は見えなくなった。
「参りましょう、姫様。皆が待っております」
丘を下りた草地に白い馬が待っていた。
「待たせたな」
フレデリカが言うと、馬は何でもないという風にぶるる、と微かに鳴いた。
鼻づらを撫で、ミシュアの手を借りて乗る。
白馬はゆっくりと王城の方へ歩き出した。
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