Colvaressia

4/5

18人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
「姫様、今後あの者には話しかけくださいませんように」 「何故だ」 馬術指南の約束を取り付けた後、馬小屋から去った2人は城の広い廊下をかつかつと早足で行きながら話をしていた。 「あの者の身分は非触民(アンタッチカ)です。本来ならば王族の膝より上に頭を上げることを許されぬ卑族です」 「なるほどな。だから貴章にも気付かなかったのか、あの男」 フレデリカは笑いながら、左胸のフリルに縫い付けられた紋章付きのリボンをつまはじく。 「これを見れば王族というのは分かろうものだがな。わざわざ名を名乗ったのは久しぶりであったわ」 宮廷内では、リボンを身につけている者は王族の証であり、それを目印に下級の身分の者は礼儀を通さなければならない。 「申し訳ございません」 「何をお主が謝る」 「私の手配不足で――」 「私を馬鹿にしているのか?そのようなことで怒る意味があるか。あの者は知らなかっただけだ。全く……お前の繊細すぎる気回しには付き合えぬわ」 やれやれ、といった風にフレデリカは肩をすくめた。 「……は」 観念したのか、ミシュアは黙って平伏した。 「しかし、卑族か――都合がいいな」 「……?」 フレデリカの言葉が理解出来ず、ちらりと見る。 「ああ、いや何でもない」 彼女はふいっ、と考え込む姿勢をやめ、歩みを早めた。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加