一章

12/20
前へ
/463ページ
次へ
刀を突き付けられている形の原田は目を見開いて動きを止めた。 いつもと藤堂の様子が違う事に気がついたのだ。 微笑み方が本気に見える。 「言っとくけど、嘘じゃないから。やるって言ったらやる男だよ?俺」 藤堂の珍しく見せる真顔に原田は引いた。 そして静かに木刀を鞘に戻す仕草をし、腰で木刀を持つと扉へと向かった。 「…平助」 いきなり呼び止められた藤堂は木刀を肩に担いで振り返った。 すると目の前には槍の変わりに原田が使っている木の棒の先があった。 すれすれに位置する先を見てびくりと体を震わせる。 「俺は強えぜ」 原田は藤堂を睨んだ。 「腹切って出直して来い」 そう言うとまた練習に戻った。 藤堂はにやりと笑ってその場を後にした。
/463ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4989人が本棚に入れています
本棚に追加