九章

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古高はみつから沖田へと視線を変え、横に置いてあった刀へ手を伸した。 「ふん、新選組に乗り換えたのか。黒蝶よ」 古高から敬語が消えていた。 顔からも穏やかな笑みなど、微塵も残っていない。 いつもとはまた違う古高の一面はみつを動けなくさせた。 「みつさん、こちらへ」 沖田の優しい声で我にかえる。 腕を引かれ、部屋を出ようとした。 「逃げるか、黒蝶!今までお前の面倒を見てやったのは私だっ!それを踏みにじるつもりか」 古高はみつに一瞥をくれてやるとその場で刀を抜いた。 「束縛しろ。殺さない程度でな」 沖田が静かに言い捨てると、みつと共に部屋を出た。 虚ろな目付きのみつは廊下で崩れた。 「古高は」 「殺しません。重要な人物なので。さ、ここから去ってください。裏門分かりますね?迎えが来ています。行ってください」 ぎゅっとみつの手を握り背を押した。 そしてみつは言われるがままに裏門へ向かった。
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