九章

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裏門から出ると土方が壁に寄り掛かり立っていた。 長い黒髪と着物は、提灯に明りがともっていないと闇と同化していた。 白煙だけが浮かび上がる。 「怪我は無いかい?」 優しい問い掛けにこくりとうなずいた。 「そうかい。それじゃ帰るかな」 壁から背を離し歩き出した。 みつもその後ろに続く。 「気が付いてましたよね。私が忍だということ。いつからです?」 「君が起きた時だ。確信は無かった」 土方が来た時に殺気を感じた。 あれはわざとだったのか。 振り返らずにまっすぐ歩く土方。 「正体が分かっても追い出さなかったのは何故です?」 「言ったろ?君の好きにすれば良いと。それに君の意思に反対するつもりも無いし、今の今まで殺意を感じられなかったからな。だから無害だと判断したのさ」 殺意なんて湧かなかった。 だって、今を生きる事が楽しかったから。 新選組に居る事が…楽しかったから 今を壊したくなかったから
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