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裏門から出ると土方が壁に寄り掛かり立っていた。
長い黒髪と着物は、提灯に明りがともっていないと闇と同化していた。
白煙だけが浮かび上がる。
「怪我は無いかい?」
優しい問い掛けにこくりとうなずいた。
「そうかい。それじゃ帰るかな」
壁から背を離し歩き出した。
みつもその後ろに続く。
「気が付いてましたよね。私が忍だということ。いつからです?」
「君が起きた時だ。確信は無かった」
土方が来た時に殺気を感じた。
あれはわざとだったのか。
振り返らずにまっすぐ歩く土方。
「正体が分かっても追い出さなかったのは何故です?」
「言ったろ?君の好きにすれば良いと。それに君の意思に反対するつもりも無いし、今の今まで殺意を感じられなかったからな。だから無害だと判断したのさ」
殺意なんて湧かなかった。
だって、今を生きる事が楽しかったから。
新選組に居る事が…楽しかったから
今を壊したくなかったから
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