九章

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「私、新選組に居るのが楽しかったんです。壊したくなかった」 「そりゃよかった。総司は毎日びくびくしてたぜ。君が居なくなるんじゃねえかってな」 前を行く土方の髪が風になびいた。 「あの血まみれになって帰って来た日、本当は此所へ戻って来るつもり無かったんだろ」 みつは何も言わなかった。 「でも、総司に行くなって言われて揺らいだんだ。」 そう、出て行くと決め込んだ堅い決心が いつもなら揺らがなかったはずだ。 だが、あまりにも新選組の居心地が良かったから 一人では無く、新選組を選んだ 「良かったんじゃねえか?君の判断は間違っちゃいなかったんだ。大丈夫さ」 土方は歩くのを止めた。 気が付くと新選組の門が目の前に有り、みつを歓迎しているようだった。 そして土方はみつを見下ろすと優しく笑った。 「おかえり」
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