一章

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男は久しぶりに新選組の地を踏んだ。 少し茶色く、癖の有る髪を揺らし、十代後半とも見受けられる童顔を真直ぐ前に見据えながら。 そして大きく伸びをした。 「たっだいまー」 のんびりとした声が、新選組の頓所に響き渡る。 男の声を聞きひょっこり顔を出し、ほころばす者は多い。 男は迷わず台所を目指した。 ――まずは腹ごしらえしなきゃな るんるんで廊下を歩いていたが、新選組に居るはずのない姿に目を付けた。 新選組に女は居ない…はず。 だが一生懸命床を拭いている姿が可愛らしい。 ――って女の子!?なんで!どおして!! あの鬼の副長が許すわけが無い。 女の後ろに近付く。 一つにまとめられた長い黒髪が床を拭く度に揺れている。 ――とりあえず…声掛けるか? 「あのさー」
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