一章

8/20
前へ
/463ページ
次へ
「ただいま、歩さん」 藤堂は台所に着いていた。 「あら、おかえり。ええ時に帰って来たね。そろそろお昼にしよ思ってたんよ」 大きな包丁を軽々と扱っている歩。 藤堂は歩の横に近付いた。 「あの娘何者?」 「あの娘っておみつちゃんの事?」 うんうん 藤堂は頷いた。 「もう会ったん。ええ娘やに。とても働き者やしね、気のきく娘」 「それは分かるよ。じゃなくてさ、何者なの?」 歩はきょとんとした表情になったが、すぐに微笑んだ。 「本人に聞いた方が早いよ。ねぇ?おみつちゃん」 と言うと、後ろの襖が開いた。 気配を感じさせずに入って来たのはみつだった。 藤堂はそんなみつにたじろく。 「何でしょうか?」
/463ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4989人が本棚に入れています
本棚に追加