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「あっ、やべっ」
と呟いて握っていた木刀を見た。
その場の流れで木刀を持って来てしまったようだ。
藤堂は一つ溜め息を吐くと反転してもと居た所を目指した。
道場に着き、恐る恐る中を覗く。
まだ原田が槍の稽古をしているのが見えた。
中に入るのに気が乗らず、道場の前に植えてある大きな桜の木の下に腰掛けた。
「馬鹿だなぁ」
藤堂は膝を抱きかかえ、顔をうずめた。
――好きになったって
報われないんだ…
藤堂は女好きだ。
だが、一人だけを好きになった事は無い。
あの時以来…
「あー、やだやだ。何で今思い出すかなぁ」
「どうされました?」
頭から優しい声が聞こえた。
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