一章

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びくりと身体を跳ねさせ、顔を勢い良く上げた。 目の前には心配そうに自分を見つめて来る、空の籠をもつみつの姿。 気配を感じさせずに近付いた彼女に驚いた。 ――忍なんだから当たり前か… 「みっちゃんこそどうしたの?こんな所で」 いつもの笑顔で尋ねた。 「洗濯物を取り込みに来たんですが、藤堂さんがうずくまってるのを見つけたんで」 藤堂は気まずそうに目をそらした。 「そっか、俺は大丈夫。洗濯物いれなよ」 「そうやって隠してきたんですか?それじゃ、お言葉に甘えて洗濯物入れさせてもらいます」 そう言うと近くに籠を置き、洗濯物を取り込み始めた。 「普段は女好きで隠してきたんだ」 藤堂はぽつりと呟いた。 みつは手を止め藤堂に振り返る。 「続けて?今から話す事は独り言だと思って聞いて欲しい」
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