一章

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「落ち込んでる藤堂さんなんて藤堂さんじゃありません。でもたまには弱いところ、見せても良いんです」 心臓の鼓動と同じ早さで背中を優しく叩かれ、懐かしい思いが蘇る。 人肌が恋しいと、前は愛しい人に甘えていた。 ――あの人も暖かかった 「もうやだやだ。みっちゃん優し過ぎだよ」 回していた手に力が増した。 ――左之に本気になっちゃだめって言ったのに 「ありがとう。もう見せる事はないよ」 そう耳元で囁くとみつから手を引き、立ち上がった。 「どこへ行かれるんですか」 「んー…決着つけに、かな?あと、分らず屋に敵が増えたことを教えに」 そう言い残し藤堂は迷わず道場を目指した。 手には木刀を持ち、勢いに任せて戸を開ける。 そこには驚いて突っ立っている原田がいた。
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