五章

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      見上げた空はほんのり明らんでいた。 「もう朝じゃん」 「全然気づかなかったぜ」 「お前等は一晩中こんなことしてやがったのか」 顔をしかめる土方をよそに、みつはくすっと笑った。 ふわり。 風に乗って鼻を突く匂いが微かにする。 それにいち早く気が付いたのは藤堂だ。 犬のように鼻をひくつかせ、匂いを辿っている。 「土方副長だって、一晩中飲んでたんじゃないですか?お酒の匂いぷんぷんするんですけど」 周りに匂いが分かるとなると、相当飲んでいる事は確かだ。 それでも意識がしっかりしている土方は酒に強い事をうかがわせる。 藤堂は何かを思い付いたのか、にやにやと笑った。 「まさか今まで女と?なるほど、朝帰りってやつですね」 不適に笑う藤堂の言葉に、みつの胸を針に刺されたような痛みが襲う。
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