五章

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      肯定も否定もしない土方。 みつの心に渦がまく。 味わったことのない感覚が気持ち悪い。 土方の発言一つ一つに敏感になる。 「あぁ?」 「違うんですか?副長の事だから、綺麗な女引っ掛けてんでしょ」 すかさず相槌を入れる藤堂はとても楽しそうだ。 ちくり。 また針が胸を刺す。 「毎晩そんな虫のいい事があったら、こんなむさ苦しいところ帰ってきやしねえよ」 まだ残る月明かりに照らされた土方の顔が、にやりと口角をあげる。 それがとてもいやらしくて、みつの首を絞めた。 苦しい。 何故かは分からない。 「わぁ、何か色男にそんな事言われると腹立つ」 「お前、俺は副長だぜ。立場分かってんだろうな?」
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