一章

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      憎き恋敵(藤堂が勝手に決めつけた)の所を訪ねるのはしゃくに障るが、あの人のため仕方がない。 思い立ったら、即行動。 藤堂は足早に山崎のもとへ向かった。 医者としてまた新たな一歩を踏み出したらしい山崎を、良く屋敷内で見る様になった。 ――厄介だなぁ 屋敷内と言うことは、二人の接触は増える。 そうなると、山崎があの人に歯止めが効かなくなるのも時間の問題。 ――男は獣だもの 「本当に厄介」 がらりと開けた障子の向こう側に、書物を読み老けている山崎の姿があった。 突然の事にも動じず、顔すらも向けないで視線だけを送ってくる。 「開けて第一声がそれですか。俺にどうしろと?」 その態度がいっそう清々しい。 「あー…うん。消えて?」 「いきなり何を…まぁ、あなたの唐突な発言には慣れましたが」 「山崎のくせに生意気な!」
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