一章

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      「まぁいいやって…あなたが」 「だって、言ってみたらそんなの俺には関係ないし。ちょっと距離が縮まっただけの話しでしょ。そこで山崎が」 「俺は…」 山崎の小さな声を藤堂は逃さなかった。 「あ~あ、手出せないんだっけ?かわいそうだなぁ~、山崎」 そう言って山崎を笑う藤堂。 山崎には逆効だったようだ。 「そんな事ありません。あの方の美しい笑顔が毎日見れるのなら、それも良いかと」 静かな声の向こう側に苛立ちを感じた。 ――これって…形勢逆転? 自覚のない色男が微笑むだけで、どれだけの女が虜になるだろう。 少々の青筋が浮き出ていても関係無い。 でもそんな色男を虜にしたのは、間違いないあの人。 「お前、一生お嫁さんできないよ」 「ええ。俺も、お相手があの方以外なら一生独身でもかまいません。」
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