一章

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      山崎から発せられたとは思えない言葉に、藤堂は後悔の念に駆られた。 ここまではっきり言われてしまっては、からかい甲斐がない。 「みつさんが誰と一緒になろうと、みつさんが幸せだったらそれで良いんです。俺じゃなくとも」 最後の言葉は弱すぎて聞き取りにくかった。 自信が無いのかもしれない。 「こうでもしないと一緒には居れないんです。」 逃げ腰の山崎に若干の苛立ちを覚え、藤堂は無言で立ち上がった。 「つまんない。帰る」 「…俺の話し聞いてないですよね。一体、何しに来たのですか」 「別に」 冷たくしあしらったのは、今の山崎を認めたくなかったからだと思う。 この男は一生みつを見ているしかできない。 でも、自分は違う。 「今だけだよ」 ――一緒に居られるのは 今だけ
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