一章

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      山崎とみつが一緒に居られるのは今だけ。 は、遠回しに藤堂がみつにちょっかいを出せるのは今だけ。 を意味している。 ずっとこの環境が続くと限らない。 時代が変わっていくように、新選組内部も変わってきている。 山南の死が良い例だ。 自分が築いた関係はいつか消え去って行く。 昔の想い人を亡くしたように… 藤堂は頭をぶるぶる振って、抹消しようとした。 だが、それも虚しく頭の隅にぽつりと残ってしまう。 「藤堂君、顔色が悪いですね。何か嫌な事でもありました?」 前から静かに現れたのは伊東だった。 滅多に姿を表さない伊東に驚いた藤堂だが、いつものように笑った。 「何もないですよ、せーんせ」 師匠である伊東は尊敬する人物。 剣の腕は伊東に誉めて欲しいが故に上げた様なものだ。
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