一章

11/31
前へ
/463ページ
次へ
      「いつもの君らしくないですね。」 ふふふと笑う伊東がどこか妖艶に見える。 そう、何かを企んでいるようにも。 「そうですか?いつもの俺ですけど」 「ふふ、なら良いです。少し心配になっただけなので、気にしないでください」 白い肌に綺麗に結い上げられている髷は、永倉よりも馴染んで見える。 伊東はゆっくりと藤堂の前まで歩み寄った。 「実は貴方に相談があるのです」 相談と言われても、何を相談されるのかさっぱりな藤堂は首を傾げる。 「俺、大した事言えませんよ」 「それでも、貴方の答えが聞きたいのですよ。藤堂君」 伊東は静かに話し始めた。 風も、静かに雨の匂いを運ぶ。
/463ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4987人が本棚に入れています
本棚に追加