一章

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      今度ははっきりと聞こえた声に鳥肌が立つ。 藤堂は言い終わると、みつの腰と顎に手を移し口付けをした。 目を丸くして驚いたみつは逃れる事すら忘れた。 だがそれは徐々に深みを増していく。 深く、深く。 酸素を求め口を開と舌を絡め取られてしまう。 今度は二人の荒い息だけが響いた。 細く見えてもやはり藤堂も男。 いくら押し離そうとしても、びくともしない。 苦しい。 息ができない。 逃げたい。 でも…苦しいのは、 逃げたいのは、 ―――誰? 薄れゆく意識の中でみつは、静かに涙を流す誰かを見た。 見慣れているはずなのに、どこか違った誰かを。 みつは息をする事すら忘れ意識を失った。
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