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「…雨か」
いきなり降り出した雨は、激しさを増した。
瓦に打ちつける雨音がつんざく。
――あの人は大丈夫だろうか
自分のわがままに付き合ってくれている彼女を浮かべた。
側に置いておきたいがために、考えた、お使いと言う名の悪あがき。
こんな事をしても意味がない事ぐらい分かっている。
なのに…
――俺は何をしている
馬鹿らしい。
そう頭を抱えた時、堅く閉ざされた襖の向こう側に気配を感じた。
うるさい雨音で全てが遮断されていたようだ。
それにしても、弱々しい気配。
そう思いながら、山崎はゆっくりと襖を開けた。
そして、驚愕する。
意識を失っているみつを、びしょ濡れになった藤堂が抱き抱えていたからだ。
何故か声が出なかった。
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