一章

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      「…雨か」 いきなり降り出した雨は、激しさを増した。 瓦に打ちつける雨音がつんざく。 ――あの人は大丈夫だろうか 自分のわがままに付き合ってくれている彼女を浮かべた。 側に置いておきたいがために、考えた、お使いと言う名の悪あがき。 こんな事をしても意味がない事ぐらい分かっている。 なのに… ――俺は何をしている 馬鹿らしい。 そう頭を抱えた時、堅く閉ざされた襖の向こう側に気配を感じた。 うるさい雨音で全てが遮断されていたようだ。 それにしても、弱々しい気配。 そう思いながら、山崎はゆっくりと襖を開けた。 そして、驚愕する。 意識を失っているみつを、びしょ濡れになった藤堂が抱き抱えていたからだ。 何故か声が出なかった。
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