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五分後――
景品を山のように抱えた叶が祭りを楽しむ人々の間を歩いていた。
後方からは、男泣き……というより、真剣に泣く男性の声が聞こえていた。間違いなく射的の店主の泣き声である。
その声の主に紗耶香は同情の念を送ることしか出来なかった。わかることはただ一つ。
叶に容赦など微塵もなかった。
「流石にあれはやり過ぎではなかったか?」
「これでも魔法も魔力も使ってないから、かなり手加減したつもりなんだけどね」
「一般人からすれば、戦い慣れしている私達はただの化物にしか見えない。もう少し力を抑えるべきだったな」
「善処するよ」
やはり日常は儚くも、確かに存在する大事なものであった。
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