高校バスケデビュー戦

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 3Q。    徳山ベンチから出てきたメンバーを見て、新谷の面々は驚きを隠せなかった。    近くにいる者同士で、ひそひそと話し始めた。    徳山は、茂木を除く4人が、明らかに補欠だったからだ。    茂木も、まだ1年であることを思えば、完全に主力と呼べる選手はいないことになる。      これまで、冷静に名前だけの顧問の代わりに指揮をとっていた中塚も、これには怒りを感じていた。    確かにワンサイドな展開になりつつはあるが、その打開策をいろいろ考え、指示したことが、一気に無に帰したわけであるから、まだ17才にもならない少年にすれば、仕方の無いことだといえよう。    しかし、その怒りが結果的に、更に点差開くことになる。    徳山顧問にしてみれば、3年引退後の新チームの初戦なわけであるから、欠点や課題を探す為に、いろんなパターンを試しているだけに過ぎなかったのだが。    中塚は“なめられた”という思いから、主力をすぐにでもコートに引き戻してやろうと考えた。    そこで、オールコートマンツーを指示する。    これが、裏目に出た。    控えといえど、徳山のガードのレベルは高かった。    相手の戦力分析を怠った中塚のミスといえる。    新谷のオールコートマンツーは、バックコートであっさり振り切られ、セットオフェンスをするまでもなく、ほぼ速攻の形で得点を許してしまう。    その動揺により、新谷ポイントガードの河辺が、ミスを連発してしまう。    そして、徳山の速い攻めに翻弄されてしまった。    3Q開始3分で40点差になろうとしていた。    中塚を始め、ほとんどの新谷のメンバーが集中力を無くしていく中、ショーケンだけが、懸命にディフェンスをし、チームプレーに徹していた。    前半に学があれだけやられた茂木をほぼ完璧に抑え、オフェンスでは、確実にパスを回し、味方の得点チャンスを作っていく。    しかし、学たちは、その数少ないチャンスを活かすことは出来なかった。    集中力を欠いたシュートでは、ボールをバスケットリングに通過させることは、難しい。    時々得点するものの、それはまぐれに等しかった。    バタバタとした3Qが終わった時には点差は50になっていた。      その圧倒的な点差が、逆に中塚を冷静に戻した。
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