温度差

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 料理が、一通り揃ったのを待って、食べ始めると、別所がまた、質問を再開した。   「さっきの話やねんけど、シュート確率30%ってのは低い方なん?」   「そやな。  3ポイントだけの確率やったら30%あれば、ええけど、2点も含めての確率やったら低いかな」   「そうなんや。  どんくらいの確率が合格点なん?」   「40~50くらいが良い方で、60超えたらすげーな。    3ポイントだけやったら50超えたら、かなりええで」   「そうなんや。  けど、10点以上取ればええって聞いたことあんで」   「確かに二桁得点すんのも、評価されるな」   「学は、今日10点超えた?」   「さあー、どうやったかな。  途中までは、覚えててんけど……!」    学が、ハッとして愛美を見る。   「12点」    愛美が、意味深な笑みを学に向けて、答えた。    その笑みの意味を知っているのは、学と愛美のふたりだけだ。    そのまま、いつのまにか和やかな雰囲気で、食事は終わった。      全員が食べ終わったのを確認して、中塚が話し出した。   「今日は、お疲れさん」   「お疲れーす」    周りが口々に自分たちの労をねぎらった。   「結果は、満足のいくもんや無かったけど、それぞれええ経験になったと…」    ここで、中塚の隣りのテーブルにいた武田が、堪えきれなかった笑いを洩らした。   「何笑っとんねん?」    中塚もつられたように、笑って武田に聞き返す。   「悪い、悪い。  コイツがあのオッサン、絶対ヅラやっていうから、見てみたら明らかなヅラやって、堪えられへんかってん」    と、入口付近に立っていた50代くらいのサラリーマン風の男性客を武田が指差した。    その場のほぼ全員が、一斉に笑い出した。    学を除いて……。    学は、内心、試合の反省会がやっと始まって、自分のミスを責められるのではないかと思い、多少の緊張をしていた。    また、反省会が有ると聞いて、嬉しくもあった。    学は、あれほどの大差で負けたことがなかったし、茂木にもかなわなかった悔しさが、今も腹の中で消化出来ていない脂っこい食事の後のように、ムカつきを残していたからだ。    こんな悔しさを次に味わいたくない為に、反省会に真剣に全員が取り組むものだと思っていた。    それなのに、副部長である武田が、その雰囲気を壊すような言動をしたことが、学には、腹立たしかった。
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