温度差

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 少し間を置いて、中塚が話を再開する。   「えーっと、どこまで話したかな。    あ、そうそう、それぞれ、ええ経験になったんちゃうかなって思ってる。    で、ウインターカップの予選に向けて、頑張っていこうや」    武田のテーブルでは、まだクスクスと笑い声が、途切れない。    それに、とうとう学がキレた。   「武田さん、真面目に反省会しましょうよ」    言葉自体は丁寧だが、目は座っていた。    それに、武田もキレる。   「何や、その目は!    新入りが、ちょっと試合出たからって、態度デカすぎるんちゃうか!?」    一触即発の空気が流れる。   「おい、店の中で大声出すなって。    武田も武藤もどっちも態度悪いぞ」    中塚が間を取り持とうとするが、ふたりの間の空気は固まったままだった。   「何で、あんな大敗のすぐ後で、そこまではしゃげるんスか?    ましてや、自分のミスも数え切れんほど、有ったっていうのに」    学の言い方が、余りにも挑発的になっているのに、ショーケンたちが焦り出した。   「言い過ぎやって」    小声で、学を窘めながらテーブルの下で足をつつく。    が、学は一向に引こうとしない。   「あん!? お前に云われたないわ!!    シュートは入れへんわ、ディフェンスはザルやわ、体力ないわ、指示は忘れるわ。    そんなヤツに、グチャグチャ云われる筋合いないわ!!」   「そんなん、アンタに云われんでも分かってんねん!!    だから、俺は、真面目に反省会したい!っていうてるんやないか!!」    ふたりの声量が、段々大きくなっていく。   「わかった、わかった。    止められへんねやったら、続きは店出てからにせい。    行くぞ!!」    そう云って立ち上がった中塚に続いて、バラバラと皆が席を立った。
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