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「ああ、僕の手をおもいっきり引っ張って出してくれないか?」
そう言うと、バンザイするように両手を上げる人影。分かったと言って、その手を掴もうとした渡だったが、ふと止まった。
「……?どうかしたのか?」
怪訝そうに首を傾げる人影だったが、渡の脳内では、上げた両手でゴミ箱の蓋を支え、腰を横に振っている人影のイメージが浮かんでいた。
まるで某魚介類がキャラの名前の、日常を面白く描いた国民的アニメのオープニングを思い出し、渡がこらえきれず吹き出しかけた時だった。
「……君は大丈夫なのか?」
目の前の人影が、何か痛いモノでも見るような目で見ながらそう言った。暗くて分からないが、なんとなく分かる。
「……ああ、うん。割と大丈夫……」
人の不幸を笑っている自分を恥ずかしく思うと同時に、ゴミ箱にはまっているような人物にそんな目で見られていることにショックを受けつつ、人影の右腕を両手で掴む。
「もう片方はゴミ箱を抑えつけておいて。じゃないと、ゴミ箱も一緒に引っ張って出れないから」
渡がそう言うと、確かにそうだなと人影は納得し、上げていた左腕を下ろしてゴミ箱を抑える。
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