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この世界に、魔法等の不思議な力は存在しないし、不思議な現象は起きたりしない。それがこの世界の常識のはずだった。
しかし、それは「表」の世界だけに通用する常識である。
「表」があれば、必ず「裏」がある。それは世界にも当てはめることができて、「裏」の世界というものが存在する。
そして、この裏の世界にも常識というものが存在していて、この世界には魔法等の、不思議な力が存在し、存在していることが当たり前の常識となっていた。
そして裏世界の常識の中には、この世界の住人にとっての、使命のようなものも含まれている。
裏世界に存在する力は、その一つの世界だけには留まることはない。常に境界線を越え、様々な所へと流れてゆくのだ。
もちろん、表世界に流れつく可能性もある。そしてその流れついた力は、必ずしもプラスになるとは限らなかった。
裏世界の住人は、自分達の世界の常識に含まれた使命のために、今日も流れ着いた力の元へと駆け出す。
†×†
「感じる……大きな力の気配が」
建物から発せられる、人工的な光に照らされた街を、月を背にするようにビルの屋上に立って、一つの黒い影が眺めていた。
「……行くか」
黒い影はそう呟くと、屋上から跳んで、光に満ちた街へと舞い降りる──。
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