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路地裏は狭く、なかなか光が入ってこないため暗い。空き瓶等のゴミが転がっていて、踏んづけて転ばないように気を付けて走った。
「……っとと」
足下に気を付けていても、なかなか上手く走ることができない。ゴミ箱が倒れ、足の踏み場がないほど散らかっていた。その散らかりようを見て、渡はこの辺にいる野良犬か、酔っぱらいでも倒したのだろうと考える。
そんなことを考えていると、どうやら渡のそんな考えが当たっていたのだろう。ゴミ箱らしき物の前に、一匹の野良犬がいた。しかし、何やら様子がおかしかった。
まず一つ。野良犬がそのゴミ箱らしき物に向かって吠え続けていた。そして二つ。これは先程の言葉にも出ている。
「……あれホントにゴミ箱か?」
そう、ゴミ箱「らしき」物なのだ。明かりがなく、シルエットだけしか見えないが、少なくともゴミ箱にだけは見えない。強いて言うならゴミ箱に上半身、下半身があるように見える。
下半身のシルエットは完璧ゴミ箱だ。見間違いはない。誰がどう見てもゴミ箱だ。
問題は上半身。シルエットからしても判別つきにくい。どうしてもそれを表現できないのかと言われれば、それは逆さにした碇だとしか表現できそうにない。
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