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野良犬が、そのゴミ箱に逆さにした碇が突き刺さったような物体に吠えまくる。
この警戒っぷりを見れば、これがなんとなく関わってはいけないものではないかという考えが頭に浮かぶ。
一体これは何なのだろうかという好奇心はあったが、渡は頭の中に浮かんだ考えに従って、それを避けて通ろうとした、その時だった。
「──すまない、そこの少年。僕を助けてくれないか?」
不意に、どこからかそんな声が聞こえてきた。渡は跳び跳ねそうなくらい驚き、辺りを見渡す。少年といえば自分しかいない。
大人びた言い方で、渡のことを少年と呼んでいるが、その声もまだどこか幼さが残るような、少年の声だった。
とりあえず、まるで錆びたブリキ人形のようなゆっくりとした動作で、もう一度辺りを見渡してみる。周りには吠えまくる野良犬と、ゴミ箱のような物体だ。
野良犬の方に目を向けて分かったが、先程より一層警戒心むき出しで、ゴミ箱のような物体に吠えている。
まさかと思い、渡はゴミ箱へと目を向ける。じっと目を凝らして見てみるが、何の変化もない。
それが分かった渡は考えすぎと、空耳だったのだと安堵の息をつこうとした時だった。
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