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「もう一度頼む。そこの少年、僕を助けてくれないか?」
「うわあぁぁぁぁっ!!」
これには渡も、小さく跳び跳ねながら奇声をあげて驚いた。声と同時に、ゴミ箱のような物体がガタガタと揺れからである。
野良犬も動いたことには驚いたのだろう。勇ましく吠えている割には、渡に近付き半ば隠れるようにして吠えていた。
渡はそんな野良犬の様子を少し目で追いながらも、すぐにゴミ箱のような物体へと目を戻す。
「……聞こえていないのか?頼むから手を貸してくれ」
そんな反応の渡に少し機嫌を損ねたのか、声に若干苛立ちを含め、先程より声を大きくして言った。
「え、えーっと……」
「……もしかして、その野良犬に噛まれて動けなくなったか?大丈夫か?」
渡がどうしようかと口ごもっていると、そのゴミ箱のような物体は、渡の近くに野良犬がいることに気付き、勘違いをすると、ガタガタと揺れ動いて渡に近付く。
渡に半ば隠れるようにして吠えていた野良犬は、勇ましさなど完璧に吹き飛び、情けない鳴き声をあげて逃げていった。
「あ、ちょっ──!?」
野良犬に見捨てられた渡は、思わずそんな薄情な犬へと目を向けていたら、その間にゴミ箱のような物体が自分の前に来ていた。
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