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すっと差し込んだ影に、渡は犬が走り去った方向に向けていた首を、恐る恐るその影の発生源へと向ける。
「大丈夫か?怪我を見せてみろ」
そう言って渡に向かって手を伸ばしてくるのは、下半身がゴミ箱、上半身が人間の──。
「ぎゃああぁぁぁぁぁぁっ!妖怪ゴミ箱人間ーーーーーーーー!!」
まったくもってひねりがない、最低なネーミングセンスの渡が、目の前の物体に勝手に命名すると、腰をぬかしてその場にへたばりこむ。
「む……心外だな。妖怪などではないぞ、僕は」
妖怪と呼ばれた物体は、その言葉通り、渡の言葉に心外そうにそう答えた。
「ぎゃああぁぁぁぁ!──…………へ?」
その言葉に、渡は叫ぶことを止めて、よく自分の前にそびえ立つ影を見た。
その場にへたばりこんでいるため、渡が見上げるような形になって、影のせいで顔が分からなかったが、それはよく見れば、ゴミ箱にはまってしまった人間だった。決して妖怪などではない。
「落ち着いて見て、僕が妖怪じゃないことが分かっただろう?」
そのゴミ箱にはまっている人の言葉に、勝手に勘違いして騒いでいた自分が恥ずかしくなり、頬を赤くして俯いた。
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