消えた聖剣

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ギラギラした暑い夏のさなか、エジプトから発掘調査を終えて帰ってきた上城青龍は、その骨休めに八ヶ岳に滞在していた。現在55歳、妻をがんで亡くし、息子の雄介を一人で育てている。 雄介は15歳。生まれた直後脳性麻痺が発覚、幸いその程度は軽くリハビリでかなり改善されたものの、若干後遺症が残ってしまい、そのために学校でいじめにあったことから不登校になっている。 青龍は雄介が学校で変に苦しむよりも、彼が好きなことをやらせることで心の傷をいやすことができればそれでいいのではないかと考え、あえて雄介が不登校に陥ってからも必要以上に彼を叱りつけることはなかった。そのおかげか雄介は学校には行けないものの、明るい心を徐々に取り戻し始めている。 ここは青龍と雄介が泊りに来ている小さなコテージのベランダ。外は満天の星空で、じっと見つめていると空に吸い込まれそうな美しさを放っている。 「父さん、人間って死んだらどうなっちゃうんだろうね」 雄介が口を開く。 「どうした?お母さんのこと思い出して辛くなっちゃったか」 青龍はそういうとそっと雄介のそばへ歩み寄りその肩に手をやる。 「お父さんも心配かけっぱなしだったけどお母さんは大好きだった。それがまさかたばこも吸ってないのに肺がんであんなことになるなんて思わなかったけど。でもな、お母さんはこの世界でやることをやり終えてお星さまの世界に帰って行ったんだ。この星空のどこかにお母さんがいると思えば、淋しくないだろう?」 「うん、お星さまになると思うなら少しは救いが感じられるかもね」 「お星さまはとんでもなく長い時間の間、ピカピカ光っているけどいつかは爆発してその寿命がいったん尽きる。でもいろんなものを吸い込んでまた新しいお星さまになる。それは人間も一緒だぞ。どうして人間が神様から命を与えられて生まれてくるか、お前はちゃんと考えたことはあるか?」 「う、うーん…難しすぎるよ父さん。あまり普段深く考えることないし」 「あっはっは、まあお前の年だとまだピンとこない質問だったかな」 困った顔をする雄介に優しく笑うと、青竜はこう切り出した。
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