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なおも物言いたげな様子でレイラさんを見ていたソフィを、俺は気分転換も兼ねて外へと連れ出した。
話があるというのは方便だが、一応の目的はある。
「服……ですか?」
渡した俺の外套ですっぽりと全身を覆ったソフィは、聞き返しながらも物珍しげな様子で辺りを見渡している。
「ああ、ソフィのドレスは血で汚れていなくても目立ち過ぎる。あまり上等な物は買ってやれないが、しばらくは我慢してもらえると助かる」
行き交う人でごった返した人並みに飲み込まれそうになったソフィの裾を引きながら、俺はどうにか言葉を返す。
活気のある町だと思っていたが、表通りはその比じゃないな。
「いいえ、ユオンお兄さまが服を買ってくださるなんて嬉しいです。わたくしの一生の宝にしたいと思います」
冗談なのか本気なのか、表情を見る限りは後者なのだろうな。
だからと言って目立たないようにという目的からして奮発することはできないが、せめて見るたびにため息を吐かれる品にはならないよう、最善を尽くして選ぶとしよう。
「それよりもソフィは、こういった場所に来るのは初めてなのか?」
ソフィの仕草はまるで父母に手を引かれて見知らぬ場所に連れられた子供のようで、所在なさげに、けれどとても興味深く目に映る光景を受け止めている風に感じられた。
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