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そう言えばナユも宿を襲った連中には違和感があったと口にしていたな。
まさか彼らもこの者たちと同じ傭兵だったのだろうか。
もしそうだとするのなら……、
「おい、聞いてるのか! 銀髪の兄ちゃん」
いきり立つ屈強な男。
集団から一人前に抜け出してきたところを見ると、まとまりのない連中の中であっても幅を利かせている立場なのだろう。
身の丈程はある巨大な斧槍を肩上に掲げて威圧してくる辺り、腕にも相当の自信がありそうだ。
こいつも俺と同じく、いや俺以上に戦いを楽しんでいる質だな。
所詮傭兵を生業にしている者など、須くこういった性質を持っている。
老いて死ぬより戦場で死ぬことを望んでいる者ばかりだ。
何を遠慮することがあろうか。
気の向くままに、剣を振るえばいい。
そんな魅惑的な言葉が頭で囁かれたが、僅かに残った理性で戦闘を回避するすべを探る。
そのようなものなど、ありはしないと分かってはいるが。
「なら訊くが、違えばお引き取り願えるのか?」
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