序章 紅蓮の楔(クサビ)

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 ごめんなさい。  ごめんなさいごめんなさい。  ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。  何度だって謝ります。  謝りますから。  だから返して。  返してください。  わたしを厳しく叱ってくれるお父さんを。  優しく微笑みながらお料理を教えてくれるお母さんを。    本当は大好きな怠け者のお兄ちゃんを。  女神さまでも教皇さまでも国王さまでも誰でもいいから。 「返してっ! お願いだから返してよぉぉぉっ!」 「……すまない」  この人は悪くもないのになんでわたしに謝るの?   見ず知らずの何の関係もないわたしのことを、こんなにも強く抱き締めてくれるの?  命を助けられただけでも十分過ぎるのに。    それ以上を望んでいいはずがないのに。  
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