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ソフィが命じて有無を言わさぬ形にしてくれなければ、彼女は最後まで認めてくれなかったのではないだろうか。
「レイラさんみたいな美人を背負えるなんて、完全に役得ですよ」
「言ってろ」
確かにレイラさんは世の男の半数がすれ違えば振り返るほど美しい女性だが、役得と考えるにはやはり気が重い。
俺は思考を放棄して再び寝台に寝転がると、ナユにも眠るよう促して両目を瞑った。
するとまたすぐに規則正しい寝息が聞こえてきて、それに誘われるように俺もまどろみの中へと意識が沈んでいくのを感じる。
抵抗する必要はない。
このまま身を委ねよう。
不測の事態があっても対応出来るよう感覚の鋭敏さだけは保つよう心掛けて、俺はそのまどろみへと堕ちていった。
「英雄色を好むですよ、殿下」
聞くだけで胸が締め付けられるような、ひどく懐かしい声。
その瑞々しい黒髪も、クリッとした琥珀色の瞳も、健康的な小麦色の肌も、彼女の姿形はこんなにも鮮明に思い浮かぶのに、応えようにももう今となっては永久に届かない。
「こんなことって……叔父上は神剣の継承者なのにっ」
入れ替わり別の少女の幻影が目の前に現れる。
俺とよく似た碧の眼に溢れんばかりの涙を溜めて、キッとこちらを睨み付けている。
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