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俺は、もう逃げない。
少なくともこいつがそばに在る限りは、俺の背中をどこまでも追いかけようとする奴がいると分かるから。
俺はこいつの――ナユの師匠だからな。
「今日もいい天気です。潮風が気持ちいいですよ」
窓から覗く景色は、陽光で煌めく水平線が広がっていた。
昨日は気にする余裕もなくて意識に入らなかったが、この部屋からは海が見えるらしい。
この海の先には別の大陸が広がっていて、そこには俺が捨てた祖国もある。
兄上は黙って消えた俺に腹を立てているだろうか。
それとも呆れ果てて、俺の存在など忘れてくれているだろうか。
できれば、案じてはいないで欲しい。
「体調は?」
「正直に言えば怒らないでくれますか?」
「答えによる」
「じゃあ元気です」
どうやら酒は抜け切れていないようだが、軽口を叩く余裕はあるらしい。
ならば問題はないか。
俺は微妙に気怠そうなナユを伴って、ソフィたちの様子を見に行くことにした。
「おはようございます、ユオンお兄さま、ナユさん」
ソフィは俺が最後に見たのと同じ姿勢でいた。
まさか寝ていないのではと不安になったが、顔色はそこまで悪くはない。
しっかり寝たとも思えないが、仮眠くらいは取れたのだろう。
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