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「――レイラっ!」
耳を貫くような怒声と、目の覚める乾いた音が同時に響く。
何が起こったか理解できずに、張られた頬をさすっているレイラさん。
そんな彼女を見据えながら、ソフィは滲む涙で両目を潤ませて、己の興奮を抑えるかのように何度も荒く呼吸する。
発せられた声の大きさにも驚いたが、何よりソフィがそのような行動を取ったこと自体に俺は驚いていた。
ナユも交互に二人へ視線を移しながら、突然の展開に目を大きく見開いている。
「それ以上言うことは許しません。レイラ、貴女やっぱり少しおかしいわ」
そしてそれはレイラさんも同様で、どうにか我を取り戻した彼女は反論しようと試みるが、上手く言葉にならないでいた。
「昨日は近衛としての責務からだと思っていた。けど今は違うと断言できる。レイラ、貴女が何にそこまでの責任を感じているのか知らないけれど、お願いだから死に急がないで」
「……私は、死に急いでなどおりません。ただどうかご理解ください。私には亡き国王陛下のためにも、ソフィアさまを命に代えても守る責務があるのです」
沈痛な面持ちを浮かべるソフィに、ようやく返したレイラさんの物言いは、立場的には筋が通っているように思えた。
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