第二章 港町スリーネ

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 しかし、それならばもっと堂々としていて然るべきだろう。  相手の目を見ず、そんなにも弱々しい声音では、本心は別にあると言っているようなものだ。 「レイラさんは俺が背負いますよ。出立に夜を選んだのはそれも含めて目立たない為です。 確かに長く留まるのは得策ではないですが、これから先を考えればなるべく人目に付かない手段を選んだ方がいい」  それでも、ソフィにそこを突かせるべきではない。  そう思った俺は強引に横やりを入れた。  レイラさんの本心は気にはなるが、あまり追い詰めると思わぬことにも繋がりかねない。  今は綻びを放置してでも、完全にほどけて戻らなくなることを避けるべきだ。  レイラさんに真意を訊ねるのは、もう少し状況が落ち着いてからでもできる。 「師匠ならレイラさんの一人くらいどうとでもなりますし、邪魔になんかならないです。ほら、何の問題もない。レイラさんもソフィアさんもそれならいいですよね?」  ナユも俺の意を汲んで言葉を続けてくれる。普段からこれだけ協力的なら、俺としても大いに助かるのだが。 「決まりだ。ソフィ、少し出よう。二人だけで話したいことがある」
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