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張り合うように客引きに精を出す二人の露天商。
俺が肯くと、そんな彼らの自慢の商品が並べられた即席の店舗の間に開いた僅かな隙間に、ソフィは目線で誘ってきた。
先には薄暗く狭い路地が続いていて、見たところ人の気配はなさそうだ。
ここでは人の往来が気になるし、落ち着いて話をしたいということだろう。
断る理由もないので、俺はソフィを連れ立って石畳が剥がれた路地へと入る。
そこから吹く風は粘り付くような湿り気を帯びていて、びくりと身体を震わせたソフィは三歩も進まぬところで足を止めていた。
おそらくは世の悪意をまるで知らないソフィだが、自分の身を守るという意味では悪くない直感だ。
あまり奥へ行くと愉快なことにはならないだろうし、大通りに差す光が届くくらいのところで抑えておいた方がいい。
「それで?」
俺が続きを促すと、恐る恐る暗がりの先を窺っていたソフィはぴんと背筋を伸ばして、ゆっくりとこちらに向き直ったかと思うと挙動不審に陥った。
もじもじと指先を絡ませて顔の上げ下げを繰り返すなど一体何の儀式だろう、なんて思うほどさすがに俺も鈍くはない。
「いえ、その……ユオンお兄さまとナユさんはどういうご関係なのかと思いまして」
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