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―「変な所に出ちゃいましたねぇ」
時兎は唖然としてその人物を見た。真っ黒なシルクハットを深く被り、真っ黒な背広を着た、イギリスの紳士を思わせる人物。何故か鏡からは上半身だけ現れている。
な…何だコイツ!?
「おや?人が居る…」
時兎の存在に気付いたようで、軽く会釈し、シルクハットの縁を少しあげて、顔を見せた。
「初めまして。俺、ルキっていいます。君は?」
思ったより幼い顔をしていた。恐らく、時兎と同じか下。真っ赤な瞳に、長めの白髪で、毛先だけ血が滴るように深紅色をしていた。
「…」
その異質な容姿を見てか、時兎は黙って、自然と戦闘態勢になる。
「あのー…そんなに驚かないで下さいよ〓」
驚くってフツー…
「てか、手ぇ貸してくれません?恥ずかしい話…えー…突っかかっちゃって」
少年、ルキは笑って見せた。しかし、時兎は相変わらず戦闘態勢。
「…」
「え!?尚シカトですかぁ!?助けてくれないと俺、ずっとこのままですよ!?居続けますよ!?」
それはヤダ。
時兎は差し出された手を握った。
「あ、どぉも恐れ入ります」
手袋が填められた手は、確かに体温を感じられた。幽霊ではなさそうだ。
こいつ…本当に何者??
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