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……なんか俺、可哀想じゃないか。
だってそうだろ?
魔物に襲われながらやっとの思いで街にたどり着いたら、何故か門番に怪しまれてなかなか街に入れないし。
やっと街に入れたと思ったら疲れてんのにベンチくらいしか休むとこないし。
……挙げ句の果てには街中で迷子だよ。
「ねぇ…ねぇってば!」
「うわぁあっ!?」
どん!といきなり背中を押されて……驚きすぎて死ぬかと思った。
「なっ!なにすんだよいきなりっ!!」
──あれ幻聴じゃなかったのかよ!
痛む背中を押さえつつ勢いよく声の持ち主の方へ振り返った。
……文句の1つくらい言ってやろうと意気込んでいたのに。
「いきなりじゃないわよ!
さっきから何度も呼んでるのに無視するあなたが悪いんじゃない、ひどいわ」
──その女の子と目が合った瞬間、そんな気持ちは吹っ飛んでしまった。
「…あ えっ…と
ご、ごめん……」
青い長い髪に、それと同じ色のきれいな瞳。
…セピア色のマントで隠れてはいるけれど、俺とは大違いな高級そうな服をまとっているのが解る。
そんな服をさらりと自然に着こなしているし、何より……
とりあえず。
──めちゃめちゃ、かわいい。
あたふたする俺を見てか、女の子がにこりと微笑んだ。
思わず見とれてしまった俺に罪はない。絶対にない。
「………あなた」
…女の子は
朗らかに微笑んだまま───
「とんでもない方向音痴ね。
あなたみたいに方向感覚のない人、生まれて初めて見たわ。
見たところ旅人の様だけどよくこの街まで辿りつけたわね」
……なんだって?
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