デカイ街と小さな2人

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「なっ……なんっ、」 …笑顔でそんな辛辣なこと言われたの、生まれて初めてだよ。 「なんだよ急に!」 それだけは聞き捨てならない。 俺は一応世界を回って旅してる訳だし、色々な街にだって行きついてる。 ……ていうかそれ以前に! 初対面でそんな事言うなんて失礼だぞ!! 「ねぇ、剣士さん」 女の子は俺の腰にさしてある長剣をちらりと見ながら言った。 …怒ってやろうと思ってたのに、そんな気持ちはまたも吹っ飛んでってしまった。 …だって、「剣士さん」なんて言ってもらえたの初めてだもんな。 「…何にやにやしてんのよ」 「あっ、いや別に…」 ……やべ。顔に出てた。 あわてて顔を引き締めて女の子に視線を戻す。かなりみっともないなのは解ってる。 「…それよりなんだよ」 「……そうね、いいことを教えてあげようと思って。 あなた、さっきから同じところをずぅっとぐるぐるしていたのよ」 「………はっ?」 いや、さ。 確かにさっき「同じとこばっか歩いてる気がする」とは思ったけどさ。 まさかそんな言葉どおりなんてことは…… 「あそこにお城が見えるでしょう?」 「……あぁ」 少し遠くにある、ばかでかい城を指差す女の子。……うわ、なんだかいやな予感がしてきた。 「…この街はね、あの城を中心に作られた城下町なの。 バームクーヘンって知ってるかしら?」 女の子に言われて、それを頭に思い浮べた。 真ん中に穴が開いていて生地が何層にもなって出来ている丸いケーキだ。……食べた事はないからよく知らないけど。 「この街はバームクーヘンにそっくりなの。中心に沿って何層にも分かれているのよ。もちろん、中心はあのお城ね。 …つまり、お城の周りに沿って歩いてたあなたは 同じとこをぐるぐる回っていただけってことよ」 解って頂けたかしら? なんて言ってにっこりする女の子。 「…………。」 ええ、よく解りました。 そりゃあ景色が変わらないわけです。 破滅的馬鹿か。へこむ…!
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