デカイ街と小さな2人

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「……君は?」 「え?」 「名前だよ」 むすっとしたまま尋ねると、女の子はまたくすくすと笑った。 「……マナよ」 マナ…か。 …………あれ? どっかで聞いたことあるような名前だな…… 「ねぇラルフ、あなたはこの街で何をしていたの?」 「…え、あぁ……」 ……まぁそんなに珍しい名前でもないか。俺の住んでた所にはいなかったけど。 「…何をっていうか。 夜中にこの街に着いて、ただ宿屋を探してただけなんだけど」 「宿屋っ………て」 もうすぐ朝じゃない? 「だな!」 「………。」 呆れた!みたいな顔をされた。仕方ないだろ。 いくら旅してたって言ってもこんな大きな街に来たのは初めてだったんだよ。 この通りには宿屋やら飯屋があるって人に聞いてたから、街の入り口からここまでは来れたけど。 結局見つからないからベンチで休んで、また歩いて、 次第に人も見当たらなくなって。 …そんだけ歩いといて看板も目に入らないなんて俺はばかか。 「……マナは? こんな朝早くに何してたんだ?」 …なんだか恥ずかしくなってきたから、話を変えてみることにした。 「私?私は……」 黙り込んで何か考えはじめたマナ。……考えるとこじゃないだろそこは。 「そうね… 規模のデカイ家出みたいなものかしら」 ………考えた結果の答えがそれか。それなのか。
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