プロローグ

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「私、好きな人が出来たんだ。勇ちゃんの事も好きだけど……もう、終わりにしよう?」  僕はたった今、電話越しに恋人同士の関係を終わらせるようにと、彼女に告げられた。いつもなら変わらずに、彼女との会話を楽しんでいるはずなのに……。  ベッドの上で仰向けになり、天井を見つめてみる。この自分の狭い部屋が、やけに広く感じられる。まるで、胸に大穴でも空けられたかのような心の虚空。そして肌は一気に冷え込んでいき、冷水でも浴びたかのような冷汗。これが失恋という物だろうか。 「ああ、分かった」 「はは、怒らないんだね。普通は彼女が他の男と付き合うなんて言ったら、引き留めると思うんだけどな」  本当は別れたくないさ。僕は未だに君の事が好きで好きで仕方ない。でも、君が決めた事を僕が覆して良いはずがあるか? 「小夜子がそう言うなら、僕は引き留めないよ。束縛するのは性に合わないからね……」 「そう言われると、少し寂しいなぁ。私としては、勇ちゃんが必死に引き留めてくれる事を期待してたんだけど」
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