プロローグ

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 なっ!? 自分から振っておいて、何を言ってるんだよ。僕は君の幸せを一番に考えてるから、君の別れたいという希望を認めたのに……ずるいよ。 「悪いね。本当は是が否でも引き留めたいんだけどさ……」 「あはは、分かってるよ。意地悪してごめんね。じゃあ、そろそろ電話切るね。バイバイ、夏目君」 「ああ」  返事をした瞬間、プツリと音を立てて小夜子と繋がっている電波は断ち切られた。僕はベッドの上で、何とも言えない孤独感を味わっている。夏目君と呼ばれた事で、関係が断ち切られた事を実感する。だが、この空虚な気持はそれだけではないだろう。やはり、今まで支えてきた人が離れて行くという事実がある為に、心の底からやる瀬無い。  別れ話なんてよくある話なのに、どうして自身が世界で一番不幸な人間だと思ってしまうんだろう? 女に捨てられる男なんて世界だけじゃなく、日本だけで考えても山ほどいるんだぞ? 初恋が実らなかったくらいで落ち込んでられるか!  僕が起き上がって枕を見てみると、夥しい量の液体で濡らされている事が分かる。人差し指で目を擦ってみた。すると、そこで初めて気付く。涙を流してしまったんだという事を……。
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