出会いと別れ

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 学校のチャイムが鳴り、下校の時間を知らされる。僕は錆び付いた鉄製の下駄箱からスニーカーを取り出した。その靴を履き爪先で地面を突いて、踵までを靴の中に埋め込む。そして、背負っていた鞄を背負い直して玄関を出て行った。  すると、数十歩を歩いたところで後を追うように、一人の男子生徒が僕の肩に腕を勢い良く掛けてきた。 「勇! これから暇か? だったら俺とゲーセンに行かねぇ? この頃、勇と遊んでないから寂しくて寂しくて」 「亮太……お前は遊ぶ事しか頭にないのか? たまには早く家に帰って、勉強しても罰は当たらないと思うぞ?」  僕はそう言って、男子生徒――亮太(りょうた)の腕を取り払う。 「だって勉強嫌いだもん。やっぱり、一生に一度きりの高校生活じゃん? だったら楽しい想い出はいっぱい作らなきゃな」  あのねぇ……僕は一瞬の楽しみの為に時間を費やそうとはしないの。一生に一度きりの高校生活を灰色にして、一生のうちの長い人生を薔薇色にするんだから。
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