出会いと別れ

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 自習室から出て行き、僕は休憩所とも言える場所へと向かった。そこの周囲は硝子で構成され、図書館の中庭らしき景色が目に映る。観葉植物が広がっており、見ているだけで心が癒されるようだ。暫く、何も考えずに眺めていると、ふと亮太の言葉が頭を過ぎった。  『心から老けていっちまうぜ』この言葉が鋭く胸に突き刺さる。僕だって失恋する前までは、楽しい高校生活を過ごして一生の想い出にするんだと張り切っていたさ。でも小夜子のいない僕に、どうやって楽しい高校生活を送れと言うんだよ。信頼出来る友達だって、はっきり言うと亮太しかいないんだ。本当は生きる気力なんて、これぽっちも無いんだよ……。  そんな時、先程の自習室にいた女子生徒も休憩所にやって来た。彼女も勉強に疲れて、息抜きをしに来たのかもしれない。彼女は僕と少し離れた椅子に座った。そうして彼女も僕と同じように、観葉植物の広がる中庭を眺める。あまり、他人の事を無駄に見るのは良くない事だと思うのだけど、僕は自然と目が彼女の方に向いてしまう。これも男の性というものだろうか。
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